給与ファクタリングとは何か
給与ファクタリングは、個人が勤務先に対して持つ給与債権を業者に譲渡し、給料日前に現金を受け取る仕組みとして宣伝されていたものです。
形式としては「債権の売買」を装っていますが、実際には次のような構造でした。
- 勤務先には一切通知せず、給料日に本人が業者へ送金する
- 本人が送金しなければ、業者は本人に請求する(リスクが移転していない)
- 手数料が年率換算で数百パーセントに達する例があった
これは給料を担保にした高利の貸付と実質的に変わりません。
最高裁の判断と金融庁の見解
金融庁は2020年3月、給与ファクタリングは貸金業法上の「貸付け」に該当するとの見解を示しました。業として行うには貸金業の登録が必要であり、無登録で行えば貸金業法違反となります。
その後、最高裁は令和5年に、給与ファクタリングが貸金業法上の貸付けに当たると判断しています。これにより、法的な位置づけは確定的なものになりました。
| 適用される規制 | 内容 |
|---|---|
| 貸金業法 | 無登録営業は刑事罰の対象 |
| 出資法 | 年20%を超える利息の契約・受領に刑事罰 |
| 利息制限法 | 上限を超える部分は無効 |
出典:金融庁/最高裁判所の判例情報
事業者向けファクタリングとの違い
混同されやすいため、違いを明確にしておきます。
| 給与ファクタリング | 事業者向けファクタリング | |
|---|---|---|
| 債権の種類 | 個人の給与債権 | 事業者の売掛債権 |
| 債務者 | 勤務先 | 売掛先企業 |
| 譲渡の可否 | 労働基準法上、賃金は直接本人に支払われる | 民法上、譲渡は原則自由 |
| 法的評価 | 貸付けに該当(最高裁) | 実態が売買なら適法 |
決定的な違いは賃金の直接払いの原則です。労働基準法により、賃金は労働者本人に直接支払わなければなりません。給与債権を譲り受けた業者が勤務先に直接請求することは、この原則と相容れません。
そのため給与ファクタリングは、構造上どうしても「本人が受け取って業者に渡す」形にならざるを得ず、リスクが移転しない=貸付という評価に行き着きます。
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事業者向けなら安全とは限らない
事業者向けだからといって、すべてが適法というわけではありません。売掛債権を対象としていても、実態が貸付であれば同じ評価を受けます。
次のような条件が重なっている契約は、事業者向けであっても注意が必要です。
- 売掛先が支払わない場合に、利用者が買い戻す義務を負っている
- 代表者の連帯保証や公正証書の作成を求められている
- 分割での支払いが予定されている
- 手数料が年率換算で極端に高い
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まとめ|名称ではなく、構造で分かれる
給与ファクタリングは、最高裁により貸金業法上の貸付けに当たると判断されています。無登録で行えば貸金業法違反、年20%を超える利息を取れば出資法違反です。
事業者向けの売掛債権ファクタリングは、これとは別のものです。実態が債権の売買であれば適法な資金調達手段です。
ただし境界は名称ではなく構造で決まります。買戻し義務、連帯保証、分割払い——こうした要素が重なる契約は、事業者向けであっても実質を問われます。
事業者向けの契約でも、構造は確認する価値があります
買戻し義務や保証の有無、手数料の水準を一度整理しませんか。ご相談は無料です。
よくある質問
給与ファクタリングは違法ですか?
貸金業法上の貸付けに当たると最高裁が判断しており、無登録で行えば貸金業法違反となります。
なぜ貸付とされるのですか?
勤務先に請求できず本人が返済する構造のため、回収リスクが移転していないからです。
労働基準法はどう関係しますか?
賃金の直接払いの原則があり、業者が勤務先に直接請求することができません。
金融庁はいつ見解を示しましたか?
2020年3月に、貸金業に該当するとの見解を公表しています。
最高裁の判断はいつですか?
令和5年に、貸金業法上の貸付けに当たるとの判断が示されています。
事業者向けファクタリングも違法ですか?
違います。実態が売掛債権の売買であれば適法な資金調達手段です。
事業者向けでも問題になる場合はありますか?
買戻し義務や連帯保証、分割払いなどが重なり、実質が貸付と評価される場合です。
利用してしまった場合はどうなりますか?
上限を超える部分は無効となる可能性があります。弁護士に相談してください。
どこに相談すればよいですか?
弁護士会の法律相談窓口や、金融庁・財務局の相談窓口があります。
自社の契約が事業者向けとして適切か見てほしい
構造と条件の両面から確認できます。お気軽にご相談ください。
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