仕訳は3つの時点に分かれる
ファクタリングの会計処理でつまずく原因は、ほとんどが「契約した時点」と「入金された時点」を1つの仕訳にまとめようとすることにあります。この2つは別の取引なので、分けて考えると一気に整理できます。
実際に切る仕訳は、次の3つの時点です。
- ① 売掛金が発生したとき通常の売上計上。ファクタリングを使うかどうかとは無関係に、まずここが起点になります。
- ② ファクタリング契約を結び、債権を譲渡したとき売掛金が自社の資産ではなくなり、「ファクタリング会社から入金を受ける権利」に変わります。
- ③ ファクタリング会社から入金があったとき手数料を差し引かれた金額が入金され、ここで初めて手数料が費用になります。
②と③が同じ日に起きることもありますが、その場合でも考え方は同じです。debtor(売掛先)の信用審査に時間がかかって数日空くこともあるため、原則として分けて処理します。
具体例:売掛金100万円、手数料10%の場合
ここからは、次の条件で実際の仕訳を見ていきます。数字を固定したほうが理解が早いためです。
前提となる条件売掛金100万円/ファクタリング手数料10%(10万円)/3社間ファクタリング/手取り90万円
① 売掛金が発生したとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 1,000,000 | 売上 | 1,000,000 |
通常の売上計上です。この時点ではファクタリングは関係ありません。
② 債権を譲渡したとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未収入金 | 1,000,000 | 売掛金 | 1,000,000 |
売掛金が消え、代わりに未収入金が立ちます。相手が「売掛先」から「ファクタリング会社」に変わったことを帳簿の上で表す仕訳です。ここではまだ手数料を計上しません。金額も動いていません。
③ 入金があったとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 900,000 | 未収入金 | 1,000,000 |
| 売上債権売却損 | 100,000 | — | — |
手数料10万円が売上債権売却損として費用になります。借方の合計100万円と貸方の100万円が一致していれば正解です。
あわせて読みたいファクタリング手数料の勘定科目は?売上債権売却損の使い方
「手数料だから支払手数料では?」と考えたくなりますが、それは避けたほうが安全です。理由は勘定科目の記事で詳しく触れています。
2社間の場合は「預り金」が1つ増える
ここまでは3社間(売掛先がファクタリング会社に直接支払う形)の例でした。2社間の場合、自社が売掛先からお金を受け取り、それをファクタリング会社に送金します。この受け取ったお金は自社の売上でも入金でもなく、預かっているだけです。
そこで、④として次の2本が追加になります。
| 時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 売掛先から入金 | 普通預金 1,000,000 | 預り金 1,000,000 |
| ファクタリング会社へ送金 | 預り金 1,000,000 | 普通預金 1,000,000 |
ここで誤って「売上」や「雑収入」で受けてしまうと、売上が二重計上になります。2社間で最も多い間違いがこれです。預り金(または未払金)で受けて、そのまま素通りさせるのが正しい形です。
決算をまたぐときの処理
債権を譲渡したのが3月25日、ファクタリング会社からの入金が4月2日。3月決算の会社なら、この差が決算をまたぎます。
このとき、3月末の貸借対照表には未収入金100万円が資産として残ります。売掛金ではなく未収入金である点が重要で、②の仕訳をきちんと切っていれば自動的にそうなります。手数料10万円は入金時の費用なので、翌期の費用です。
よくある誤り②の仕訳を省略して、入金があった日にまとめて「普通預金/売掛金・売上債権売却損」と切ってしまうケース。決算をまたがなければ結果は同じですが、またいだ瞬間に3月末の売掛金が過大になり、売掛金回転期間がおかしくなります。
金融機関は売掛金の残高と回転期間を見ています。実態と合わない数字が出ると、説明を求められる場面が増えます。
見落としやすい3つのポイント
- 手数料以外の費用(債権譲渡登記費用、印紙代、振込手数料、出張費)は、売上債権売却損とは別の科目で処理する
- 掛け目が設定されていて留保金がある場合、留保金は「未収入金」として資産に残し、返還されたときに消し込む
- 消費税の区分は「非課税」。課税仕入れとして入力すると、消費税の申告額がずれる
あわせて読みたい債権譲渡登記費用・印紙代の会計処理
特に3つ目は、会計ソフトで科目だけ選んで税区分を既定のままにしていると起きやすい誤りです。ファクタリング手数料は消費税の非課税取引にあたるため、仕入税額控除の対象になりません。
あわせて読みたいファクタリング手数料の相場は?2社間・3社間の目安一覧
まとめ|「契約時」と「入金時」を分ければ迷わない
ファクタリングの仕訳は、覚えることが多いように見えて、実際には②で売掛金を未収入金に振り替え、③で手数料を売上債権売却損として落とす——この2点さえ押さえれば大半が片付きます。
2社間なら預り金が1組増える。決算をまたぐなら未収入金で残す。この応用だけです。
なお、手数料そのものが妥当な水準かどうかは、会計処理とは別の話です。年間の負担額を一度計算してみると、見直す価値があるかどうかがはっきりします。
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よくある質問
ファクタリングの仕訳はいつ切りますか?
債権を譲渡した時点と、入金があった時点の2回に分けて切ります。売掛金の発生時を含めると3つの時点になります。
譲渡時に使う科目は何ですか?
未収入金が一般的です。売掛金を未収入金に振り替えることで、債権の相手先がファクタリング会社に変わったことを表します。
手数料はどの科目で処理しますか?
売上債権売却損が一般的です。営業外費用に区分されます。
手数料はいつ費用になりますか?
入金があった時点です。譲渡契約を結んだ時点ではまだ計上しません。
2社間と3社間で仕訳は違いますか?
2社間では、売掛先から受け取った資金を預り金で受けてファクタリング会社へ送金する仕訳が追加されます。
売掛先からの入金を売上に計上してよいですか?
いけません。売上は既に計上済みのため二重計上になります。預り金または未払金で受けてください。
決算をまたぐ場合はどうなりますか?
期末時点では未収入金として資産に残します。手数料は入金があった翌期の費用になります。
留保金がある場合の処理は?
返還される予定の留保金は未収入金として資産に残し、実際に返還されたときに消し込みます。
消費税の区分は課税ですか?
非課税です。金銭債権の譲渡にあたるため、課税仕入れとして処理すると申告額がずれます。
処理が正しいか確認したい
現在の契約内容と手数料水準もあわせて拝見できます。お気軽にご相談ください。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の会計処理・税務判断を保証するものではありません。勘定科目の選択や税務上の取り扱いは、契約の実態・事業内容・会計方針によって異なります。実際の処理にあたっては、顧問税理士または所轄税務署にご確認ください。



