結論:譲渡は有効。ただし実務上のハードルは残る
2020年4月1日に施行された改正民法により、譲渡制限の意思表示(いわゆる債権譲渡禁止特約)が付いていても、債権の譲渡そのものは有効とされました。
改正前は、特約に反する譲渡は原則として無効と扱われていました。改正後は、特約があっても譲渡の効力は妨げられません。これは中小企業が売掛債権を資金調達に使えるようにするための改正です。
ただし条件がある譲受人(ファクタリング会社)が特約の存在を知っていた、または重大な過失で知らなかった場合、債務者(売掛先)は支払いを拒み、譲渡人に支払うことができます。譲渡が有効であることと、売掛先が誰に払うかは別の話です。
つまり、法律上は譲渡できる。しかし売掛先が「特約があるので元の取引先にしか払いません」と言える余地は残っている——これが改正後の姿です。
出典:民法466条/民法(e-Gov法令検索)
改正で何が変わったか
| 改正前(2020年3月31日まで) | 改正後(2020年4月1日以降) | |
|---|---|---|
| 特約に反する譲渡 | 原則として無効 | 有効 |
| 呼び方 | 譲渡禁止特約 | 譲渡制限の意思表示 |
| 売掛先の対応 | 譲渡を認めなくてよい | 悪意・重過失の譲受人には支払いを拒める |
| 供託 | 規定なし | 債務者は供託できる |
実務への影響で大きいのは、「特約があるから門前払い」という扱いがなくなったことです。改正前は、契約書に特約があるだけでファクタリング会社が審査を断ることが珍しくありませんでした。
ただし現在も、特約があると審査で慎重になる会社はあります。売掛先が支払いを拒む余地がある以上、回収リスクが上がるためです。
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実務で取れる3つの選択肢
- ① 2社間で進める売掛先に通知せず、自社が回収してファクタリング会社に送金する形。売掛先は従来どおり自社に支払うため、特約が問題になる場面が生じにくくなります。手数料は高くなります。
- ② 売掛先の承諾を得る特約があっても、売掛先が承諾すれば問題は消えます。公共工事や大企業との取引では、承諾の手続きが用意されている場合もあります。
- ③ 特約のない取引の債権を使う複数の売掛先があるなら、特約のない取引の債権を選んで資金化する。最も摩擦が少ない方法です。
現実には①を選ぶケースが最も多くなります。ただし2社間は3社間より手数料が高いため、特約の有無で調達コストが変わることになります。
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契約書のどこを見るか
取引基本契約書や注文請書に、次のような文言があれば該当します。
- 「本契約から生じる債権を第三者に譲渡し、または担保に供してはならない」
- 「乙は、甲の書面による事前の承諾なく、本契約上の地位および権利義務を第三者に移転できない」
- 「債権譲渡には甲の承諾を要する」
3つ目のように「承諾を要する」という書き方の場合、承諾を取れば何の問題もありません。禁止ではなく手続きの定めだからです。まず条項の文言を正確に読むところから始めてください。
見落としやすい場所取引基本契約書だけでなく、発注書の裏面約款、Web発注システムの利用規約、業界団体の標準契約書に入っていることがあります。基本契約書を見て「なかった」で終わらせないでください。
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黙って進めた場合に起きること
特約があることを伏せてファクタリングを利用した場合、次のような展開があり得ます。
| 場面 | 起こり得ること |
|---|---|
| 3社間で通知した | 売掛先が支払いを拒む可能性。取引関係に影響 |
| 債権譲渡登記をした | 売掛先が登記を確認すれば把握される |
| 2社間で自社が回収 | 売掛先の支払先は変わらないため、表面化しにくい |
| ファクタリング会社に伝えなかった | 契約違反を問われる可能性。契約書の表明保証条項を確認 |
最後の行が重要です。ファクタリング契約には通常、「譲渡制限特約が付いていないことを表明し保証する」という条項が入っています。特約があるのに「ない」と表明すると、こちらが契約違反になります。
特約の有無は、ファクタリング会社には正直に伝えてください。伝えたうえで引き受ける会社はあります。
まとめ|使える。ただし黙って進めない
2020年の民法改正により、債権譲渡禁止特約があっても譲渡そのものは有効になりました。特約を理由に資金調達を諦める必要はありません。
ただし売掛先が支払いを拒む余地は残っており、実務では2社間で進めるか、承諾を取るか、特約のない債権を選ぶかの3択になります。
そして最も大事なのは、特約の存在をファクタリング会社に伏せないこと。表明保証条項に触れると、法改正で守られるはずの立場を自分から崩すことになります。
特約があっても、選択肢は残っています
条項の文言によって取れる手は変わります。現在の契約と条件を、無料で確認できます。
よくある質問
債権譲渡禁止特約があるとファクタリングは使えませんか?
使えます。2020年施行の改正民法により、特約があっても譲渡自体は有効です。
改正前とどう変わりましたか?
改正前は特約に反する譲渡が原則無効でしたが、改正後は有効とされています。
売掛先は支払いを拒めますか?
譲受人が特約を知っていた、または重過失で知らなかった場合は、譲渡人へ支払うことができます。
承諾を要すると書いてある場合は?
禁止ではなく手続きの定めです。承諾を得れば問題ありません。
2社間なら特約は関係ありませんか?
売掛先の支払先が変わらないため表面化しにくくなりますが、特約が消えるわけではありません。
ファクタリング会社に特約を伝えるべきですか?
伝えてください。契約に表明保証条項があり、伏せると自社が契約違反を問われます。
特約はどこに書かれていますか?
取引基本契約書のほか、発注書の裏面約款やシステムの利用規約に入っていることがあります。
特約があると手数料は上がりますか?
2社間を選ばざるを得ない場合が多く、結果として高くなる傾向があります。
預貯金債権にも同じ扱いですか?
預貯金債権には特則があり、譲渡制限の効力が維持されます。売掛債権とは扱いが異なります。
自社の契約書を見てほしい
条項の読み方と取り得る選択肢を整理できます。お気軽にご相談ください。
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