貸借対照表:総資産が手数料分だけ減る
売掛金1,000万円のうち300万円を、手数料10%でファクタリングした場合を見てみます。
| 勘定科目 | 利用前 | 利用後 | 差 |
|---|---|---|---|
| 現金・預金 | 500万円 | 770万円 | +270万円 |
| 売掛金 | 1,000万円 | 700万円 | −300万円 |
| 総資産 | 3,000万円 | 2,970万円 | −30万円 |
| 純資産 | 900万円 | 870万円 | −30万円 |
ポイントは2つあります。
- 現金が増えた分より、売掛金が減った分のほうが大きい。差の30万円が手数料
- 負債は1円も増えない。融資ではないため借入金が立たない
この「負債が増えない」という点が、融資との最大の違いです。自己資本比率は、30万円の損失で純資産が減る一方、総資産も同額減るため、ごくわずかに改善する方向に動きます。この例では30.0%から29.3%と、実際にはほぼ横ばいです。
損益計算書:営業外費用に出る
手数料30万円は売上債権売却損として、営業外費用に計上されます。
| 段階 | 影響 |
|---|---|
| 売上高 | 変わらない |
| 売上総利益 | 変わらない |
| 営業利益 | 変わらない |
| 経常利益 | 手数料分だけ減る |
| 当期純利益 | 手数料分だけ減る |
営業外費用なので、本業の儲けを示す営業利益には影響しません。これが、手数料を支払手数料(販管費)で処理すべきでない理由の一つです。販管費に入れてしまうと営業利益が下がり、本業の収益力が実際より低く見えます。
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金融機関が見るのは売掛金回転期間
ここからが本題です。金融機関は決算書の数字そのものより、指標の変化を見ます。中でも売掛金に関して見られるのが、売掛金回転期間です。
売掛金回転期間は「売掛金 ÷ 月商」で計算し、売掛金が何か月分たまっているかを表します。年商1億2,000万円(月商1,000万円)の会社なら、次のようになります。
| 売掛金 | 回転期間 | |
|---|---|---|
| 利用前 | 1,000万円 | 1.0か月 |
| 利用後 | 700万円 | 0.7か月 |
回転期間が短くなること自体は、通常は「回収が早い会社」という良い評価につながります。ところが、売上高も取引条件も変わっていないのに回転期間だけが急に短くなると、逆に不自然に映ります。
そこに営業外費用として売上債権売却損が計上されていれば、何が起きたかは一目瞭然です。決算書を読み慣れた担当者なら、ファクタリングの利用は隠せないと考えたほうがよいでしょう。
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決算期をまたぐときの見え方
同じ金額のファクタリングでも、いつ実行するかで決算書の見え方が変わります。
- 期末直前に実行した場合期末の現金が厚く、売掛金が薄くなります。手元流動性は良く見えますが、回転期間の急変が目立ちます。
- 期首に実行した場合期末時点では通常の状態に戻っているため、貸借対照表への影響は小さくなります。ただし損益計算書には1年分の手数料が残ります。
ここで強調しておきたいのは、見え方を操作する目的で実行時期を動かすのは避けるべきだという点です。金融機関は複数期の推移で見ますし、売上債権売却損は消えません。むしろ、実態を正しく示したうえで説明できる状態にしておくほうが、結果として評価を落としません。
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年間の手数料を決算書から読み取る
決算書を使った実用的な使い道が一つあります。売上債権売却損の年間合計額を見ることです。
月300万円を手数料10%で1年間続けると、年間の手数料は360万円になります。これが売上債権売却損として1行に集約されます。
見るべき数字売上債権売却損の年間額を、当期純利益と並べてみてください。純利益より手数料のほうが大きいなら、稼いだ利益がそのまま手数料に消えている状態です。
もし手数料を10%から6%に下げられれば、同じ条件で年間144万円が手元に残ります。決算書は、その差額を見つけるための資料でもあります。
まとめ|隠れないが、説明はできる
ファクタリングは決算書に、①売掛金の減少、②現金の増加、③営業外費用の売上債権売却損、という3つの形で必ず現れます。負債は増えず、営業利益にも影響しません。
金融機関から見れば、売掛金回転期間の変化と売上債権売却損の存在で利用は把握できます。隠すことはできませんが、説明はできます。なぜ使ったのか、いくら払っているのか、どう減らしていくのか。この3点を自分の言葉で言えるようにしておくことが、決算書対策の本体です。
売上債権売却損の年間額を、一度見てください
その金額が当期純利益を超えているなら、見直す価値があります。今の条件が相場と比べてどうか、無料で確認できます。
よくある質問
ファクタリングは貸借対照表のどこに出ますか?
売掛金が減り、現金・預金が増えます。手数料の分だけ総資産と純資産が減ります。
負債は増えますか?
増えません。融資ではなく債権の売買のため、借入金は計上されません。
自己資本比率はどうなりますか?
純資産と総資産が同額減るため、わずかに改善する方向に動きますが、ほぼ横ばいです。
営業利益に影響しますか?
売上債権売却損は営業外費用のため影響しません。経常利益以下が減ります。
銀行にファクタリングの利用はわかりますか?
売掛金回転期間の変化と売上債権売却損の計上から把握できます。隠すことは困難です。
期末直前に使うと決算書は良く見えますか?
手元現金は厚く見えますが、回転期間の急変が目立ちます。複数期で見られるため得策ではありません。
売掛金回転期間とは何ですか?
売掛金を月商で割った数値で、売掛金が何か月分たまっているかを表します。
年間の手数料はどこで確認できますか?
損益計算書の売上債権売却損の年間額が、そのまま年間の手数料負担です。
決算前に手数料を見直す意味はありますか?
あります。手数料が下がれば経常利益が改善し、翌期以降の決算書の見え方も変わります。
決算書を見ながら相談したい
現在の条件と決算書の数字をあわせて拝見できます。お気軽にご相談ください。
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